思ったんだけど、章の区切りとか意味ないよねこれ(ぉ
地上ではオズワルドが間髪入れず、果敢に立ち向かっている姿が小さく見えた。それを、手玉をするように爪を振るレヴァンタンと、指示を出すバレンタイン王。
オズワルドに夢中になっているのか、上空には気づいていない。
(この一撃で…!)
握る槍に力を込め、精神を研ぎ澄ます。
「やああっ!!」
その声に、バレンタイン王が咄嗟に上空を見上げた。だが時すでに遅し、その青きサイファーは目前に迫っていた。
グウェンドリンが上空から狙い澄ました鋭い突きが、バレンタイン王のすぐ横を過ぎ、頭に輝く王冠を吹き飛ばす。王冠は鈍い金属音と共に勢いよく跳ね、オズワルドの少し後ろに落ちた。グウェンドリンは滑空の勢いでレヴァンタンを抜き、オズワルドの前に降り立った。
王冠が吹き飛んだ事にレヴァンタンもバレンタイン王も、頭の上へ気が散った。オズワルドは急いで王冠を拾い上げ、回収する事に成功した。
「グウェンドリン!」
首尾良く成功したことに顔を見合わせて大きく頷く。
ようやく、バレンタイン王が狙いに気づいた。王冠を飛ばされた事に。
「くくく……よく気づいたな。しかしその王冠の力無くとも、ハエの二匹を墜とすことなどレヴァンタンには容易いこと」
無限の回復力を止めたはずなのに、バレンタイン王はレヴァンタンの力に確信を持っているらしく、一向に怯む気配は見せなかった。
しかし傷を癒す力が無いのなら今一度、竜の鱗を切り裂く一撃を見舞わせてやれれば、きっとこの窮地を乗り越えられるはず。
オズワルドはそう思い、相手の隙をうかがった。
レヴァンタンも回復できたとはいえ、自らの鱗、肉までを難なく切り裂いた魔剣に警戒をしているようだ。隙を出すような迂闊な行動は取らないように見える。
「冥土のみやげに教えてやろう。オーダインの娘の秘めたる力、それは命…結晶炉コルドロンを活性化する力を持つ命の輝きなのだ。オーダインを父とする我が孫娘ベルベットも同じ事…。コルドロンを再び動かすため、その命を戴く。まずはオーダインの娘の命を…その後、じっくりと我が孫娘を…」
終焉を自らの手で開演出来る事を確信してか、発言も狂気じみている王の声。
失せることのない自信はここからなのか。
命を弄ぶ王の悪意のある言葉を聞き、オズワルドは怒りに震えた。
「させるものか…貴様なんぞに、グウェンドリンは渡さない!」
荒ぶる心が我慢できないのか、オズワルドが先に動き膠着状態が解かれた。
だが単に突っ込むのではない。牽制するために剣に力を込め、サイファーを解き放った。相手を誘うために。
目の前に広がる焼けた樹木ごと、巨大な竜巻がすべて飲み込んでいく。自らに向かってくる竜巻を、上空に飛び回避するレヴァンタン。
予想通りだ。オズワルドは追って上空へ飛んだ。
「甘いぞ小童め…煉獄の炎に焼かれてしまえ!」
バレンタイン王の言葉の通りだった。詰めが甘かった。
上空で仕留めてやろうと考えていたが、レヴァンタンは上空から地上へ向けて、大息で炎をはき出した。
避けたと同時に、反撃を待っていたのだ。
漆黒の甲冑を突き抜けて、オズワルドの全身に炎熱が走る。瞬間、叫びにもならない声を上げ、あまりの高熱に来る痛みに耐えながら、どうにか着地した。
「オズワルド様っ!」
グウェンドリンが、オズワルドが着地した地点に駆け寄る。
「く…っ!逆に隙を突かれたか…」
大地に跪き、焦げた身体から煙を上げながら上空を睨みつける。
上空では一撃を喰らわせたことで笑殺する王の姿があった。
やはりあの巨躯を相手にしては、単独ではあまりにも無理があるのだ。王冠を奪ったように、グウェンドリンと協力をしなければ勝ち目はないと感じた。
「オズワルド様は下がっていてください…私が戦います!」
傷ついたオズワルドを見て、怒りを顕わにグウェンドリンが立ち上がる。
「だめだ、あれは一人で敵う相手ではない!もう一度…もう一度だ、グウェンドリン!」
それを、オズワルドが咄嗟に制止する。
己の身体に刺さる痛みは甲冑が多少防いでくれたが、甲冑ほど強固な鎧ではない軽装の鎧を着ていたグウェンドリンでは、大火傷を負ってしまいそうだ。それは避けたい。彼女の美しく白い肌を傷つけたくなかった。奴の放つ手だてはすべて、己の身体に降りかかればいい。そう考えていた。
しかし、己が楯となり、再び先ほどの作戦でかかったとしても、二度目は上手くいくとは思えない。同じ事を繰り返しても、手の内を読まれているようにまるで意味がない。
王冠を吹き飛ばし、供給は止めた。それなのに致命傷を負わせる事が出来ない。
その事に、オズワルドは焦りを感じた。