やあ!(略
さっそくいってみよう(ノ∀`)
「んん?」
扉を出たところで、ミリスは一人のドワーフと目があった。
年老いた白髪と白髭が、まるでライオンのたてがみのように顔をぐるりと取り巻いている。口にはパイプをくわえ、黒と赤の仕事着を着ている。
魔石からサイファーを作り出すことが出来る数少ない鍛冶師、ブロムだ。オズワルドの剣もブロムが作ったものだ。
「あら、ブロムさん。グウェンドリン様にご用ですか?」
扉を塞ぐように立つミリスが、ブロムに声を掛けた。
見る限りでは何やら用事があるらしい。詰め込まれた鍛冶道具が顔を覗かせる大きなカバンを背負い、わざわざここまで来たと言うことは、明らかに何かがある証拠だった。
「その予定なのだが…」
扉の小窓から見える月明かりに、ブロムは躊躇った。
小窓にはまったガラスはつや消しされ、表面がぼやけていたが、見えるのだ。あのシルエットが。
「ふむ…明日にするか」
察してくれて何よりだと、ミリスはくすっと笑って頷いた。
「ブロムさんはまたサイファーの話ですか?」
細かい話は知らなかったが、大まかな話は知っているミリス。
今日もまた、二人にサイファーの話で来たのだろうと、話を切り出した。
「うむ…あやつの魔剣、どうにかしてやれんかと思ってな。もう昔のように無駄に人々を殺めるような冷酷な心も、縛り付ける悪しき者も無い…それなのに命を削ぐような剣を振り回していたのでは、グウェンドリン様が可哀想でならん。儂が作ったものなら尚更じゃ…」
それはまだ、オズワルドが妖精の国に居た頃の話。
ブロム自らが生み出したサイファーの剣。それを妖精の国の非道、心なき参謀、メルヴィンがオズワルドに与えたことで、オズワルドは何者からも恐れられる程、絶大な力を手にした。しかしそれは同時に、死の国の女王、オデットからも狙われる事でもあった。その剣は命を吸い、力にする剣…魔剣だった。命を吸いつくし、死の国で永遠に飼ってやろうと、オデットは企んでいるのだ。
だがオズワルドはそれで良かった。オデットに付け狙われるのは気分がよいものではなかったが、捨て子であった自分を拾い、育ててくれた恩を返すためにも、妖精の国のために命を削ることは惜しくなかったのだ。メルヴィンのためであればどんなに無謀な事でも成し遂げていた。
メルヴィンはオズワルドを欺し、魔剣に命を吸わせ捨て駒として妖精の国の怒濤の進撃を為し得ていたが、それも志半ばに終わりを告げた。魔剣の当事者、オズワルドの手によって。その頃から、オズワルドの心境に変化が訪れた。オズワルド自身の真実を聞き、それを乗り越えた事で、人間を道具として扱う事に嫌気がさしたのである。
だからなのか、同じような境遇にあったグウェンドリンに惹かれたのだ。そしてお互い共に、惹かれ合ったのである。
「もしかしたら、魔剣を使わずに済むかもしれぬ」
「まあ…だとしたら、グウェンドリン様も喜ばれるでしょうね…」
グウェンドリンは一度、大粒の涙を流したことがある。
オズワルドが命を削ってまで、自分のために戦ってくれた事があったからだった。
愛している者を守ろうと必死になる姿に心を打たれたのではなく、自分のために命が危険に晒される事が嫌だったのだ。こんな自分のために、と。
「で、あろうな…これは儂が蒔いた種…儂の手でどうにかしてやりたいのじゃ」
ブロムは少し後悔をしていた。
こんな、命を削るまでしてしまう恐ろしい剣を作ってしまったことに。
しかもそれが望まぬ結果として、今の状態にあるのだ。
まさかグウェンドリンと共に結ばれるとは。相思相愛なら尚のこと。
「すべては…明日にするかのう。今日は仕方がないか」
「ええ。そうですね」
寝室で起きている事を考え、二人は少し困ったような笑顔で、寝室へと別れた。









